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小児の感染症と予防

小児の感染症

①単純ヘルペス感染症 (ヘルペス)

概要

単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は主に上半身、2型は下半身に再発を繰り返す。初感染では型に関係なく、体のどこにでも感染して発症する。2型は1型と比べて再発頻度が高く、月に1~2回再発する人もある。

水痘・帯状疱疹ウイルスと同様、一度感染すると、生涯、知覚神経節に潜伏する。そして、発熱、過労、胃腸傷害、精神的ストレス、日光照射、寒冷、性交渉、時差などの誘因により再び活性化し、神経を伝わって皮膚にさまざまな炎症を起こす。

症状

初感染の場合、感染後4~7日で感染部位が赤くなり、のちに水ぶくれがたくさん現れる。その近くのリンパ節がはれて痛みを伴い、発熱、倦怠感、頭痛なども伴う。約2~4週間で治る。
乳幼児は、多数の口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎)ができることがある。
アトピー性皮膚炎がある場合は、皮膚のバリア機能が低下しているため、単純ヘルペスウイルスが皮膚に付着すると容易に感染し、顔や体の広範囲に水ぶくれが現れる。これをカポジ水痘様発疹症という。とくに初感染の場合はウイルスに対する免疫がないため、重症化し死亡することもある。
小児では、口唇ヘルペス感染が多く、口唇周囲に水泡が出現する。ヘルペス性口内炎では咽頭や歯肉にアフターが多発して痛みが激しく、食事が困難な時がある。

治療法

水痘にも使用されるアシクロビルという抗ヘルペス薬の内服で治療します。

②手足口病

概要

夏かぜウイルスの仲間のコクサッキーウイルスA‐16、A‐10、エンテロウイルス71などが主な原因。飛沫、あるいは接触で感染し、潜伏期間は3~6日間。

症状

急に38℃台の発熱があり、続いて口の痛み、よだれ、食欲低下、手足の発疹がみられるようになる。発疹は3~5mmの丘疹性紅斑に2~3mmの楕円形の水疱を伴い、手のひら、手の甲、足底、足の甲、膝伸側部、臀部などに現れる。熱は2~3日で下がり、発疹も3~4日で水疱が吸収され、アメ色に変化して治る。

治療法

特異的な治療法はなく解熱薬のような対象療法のみで治療します。

③突発性発疹

概要

生後6カ月~1歳台の小児に好発する、ヒトヘルペスウイルス6あるいは7による急性ウイルス感染症。ほとんどの子どもが3歳までに感染するといわれている。

症状

38~39℃台の発熱が3、4日続いたのち、解熱とともに全身に発疹が現れ、2~3日で消失する。下痢などもある。咳や鼻水を伴う場合もあるが、通常、呼吸器症状は少ない。発熱の時期に熱性けいれんを合併することがある。

治療法

解熱薬のような対象療法のみで治療します。発疹出現時から患者さんは元気になります。

④ヘルパンギーナ

概要

毎年7月ごろをピークとして4歳以下の小児、とくに1歳代に流行することが多い夏かぜの代表疾患。高熱と口腔内の発疹(のどの奥に紅暈で囲まれた小水疱が現れる)が特徴。原因ウイルスは多種類あり、コクサッキーAウイルス(CA)、とくに4、6、10型が多いといわれている。

症状

2~4日の潜伏期ののち、突然の高熱で発症する。口蓋垂(のどボトケ)の上周辺に紅暈を伴った多数の小水疱が認められる。水疱が破れて潰瘍を作ることもあり、幼小児では痛みのために水分摂取が不足し、高熱とも相まって脱水症状を起こすことがある。
発熱に伴い熱性けいれんを合併することもあるが、数日の経過で回復し、予後は良好。まれに無菌性髄膜炎や心筋炎を合併することがある。

治療法

特異的な治療法はなく解熱薬のような対象療法のみで治療します。

⑤みずぼうそう(水痘)

概要

水痘・帯状疱疹ウイルス:VZVの初感染によって発症。経気道感染。
水痘が治っても、VZVは三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏し、加齢などの要因によってVZVの再活性化が起こり、帯状疱疹が発症する。

症状

mizu3VZVの潜伏期間は約14日。突然の発熱とともに、全身に小紅斑あるいは丘疹が散らばって現れ、すぐにその中心部に小水疱が形成される。皮疹は次第にびらんとなり、かさぶたを形成して2~3週間で治る。
水痘の典型例は、その皮膚症状から容易に診断できる。
非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取して蛍光抗体法を用いてVZV抗原を検出する。
また、抗体検査によってVZVの初感染が確認できる。

治療法

乳幼児期の水痘は軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬あるいは抗ヒスタミン薬と、安静などによる対症的な治療を行います。
年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル(ゾビラックス)あるいはバラサイクロビル(バルトレックス)の内服を行います。

⑥溶連菌感染症

概要

溶連菌は、溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌。溶連菌感染症は、A群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症として理解されている。

症状

38〜39度の発熱とノドの痛み、体や手足に小さくて紅い発疹が出たり、イチゴ舌といって舌にイチゴのようなツブツブができる。このほか頭痛、腹痛、首すじのリンパ節の腫れもみられる。急性期を過ぎると、発疹のあとには落屑(皮むけ)が認められるようになる。風邪と違って咳や鼻水はほとんどない。

治療法

溶連菌に感染している疑いがあれば、確認のために迅速診断検査を行います。

溶連菌感染とわかれば抗菌薬を服用し、2〜3日で熱が下がり、のどの痛みもやわらぎます。発疹は、急性期を過ぎると指先から皮むけが始まります。
確実に溶連菌を退治し、重大な続発症(リウマチ熱や、急性糸球体腎炎と)を引き起こさないために、症状が消えた後もしばらく抗生物質を飲み続けます。
発病2週と3〜4週後頃に尿検査をして正常であれば、もう大丈夫。

⑦リンゴ病

概要

頬がリンゴのように赤くなることからリンゴ病と呼ばれ、5~9歳ごろ最も多く発症する。パルボウイルス科エリスロウイルス属に属するB19ウイルスの感染が原因。赤血球の膜表面にあるP抗原を受容体として感染し、主に赤芽球前駆細胞に感染して増殖する。

症状

10~20日の潜伏期ののち、子どもでは通常、頬がリンゴのように真っ赤になり、その後手足にレース状の発疹が現れる。いったん消えた発疹が再び現れることもある。成人では頬の紅斑を認めないことが多く、手足の発疹、全身倦怠感や関節炎症状だけの場合があり、風疹と間違われることが多い。数日の経過で自然に治る。

発疹が現れるころには感染力はほとんどなく、発疹出現前1週間くらいの感染力がいちばん高い。妊婦が感染すると胎児に感染し、重度の貧血から胎児死亡、流早産、胎児水腫を起こすことがある。また、慢性貧血の患者がかかると、重い症状を起こすことがある。

治療法

感染予防が困難な病気でワクチンもありません。通常は対症療法のみです。

免疫不全や慢性貧血の方には、発症時にγグロブリン製剤が投与されることがあります。妊婦が感染すると20~30%の割合で胎児に感染するといわれ、経過観察が必要になります。
症状が出た時にはほとんど感染力はないので、学校、幼稚園、保育所では登校・登園停止の疾患にはなっていませんが、基礎疾患がある人、妊婦などは、かかりつけの小児科、内科、産婦人科を受診し、よく相談する必要があります。

⑧プール熱

概要

夏季を中心に流行する急性のウイルス感染症。発熱、咽頭炎、結膜炎が主な症状。プールで感染することもあるためプール熱と呼ばれるが、患者からの飛沫による感染が多い。そのほか、手指を介した接触感染、タオルなどを共用したことによる感染がある。原因ウイルスはアデノウイルスで、冬にも小流行がみられる。

5歳以下の患者が全体の約80%を占め、成人での発症は少ない。通常は数日の経過で治る。

症状

5~7日の潜伏期ののち、発熱で発症する。高熱のため熱性けいれんを起こすことがあり、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、咽頭痛、結膜充血、眼痛、羞明(まぶしさを感じる)、流涙、眼脂(目やに)が3~5日間程度続く。頸部リンパ節のはれと痛みを認めることがある。

治療法

自然に治ることがほとんどですが、高熱や咽頭痛のため水分不足になることがあるので、幼児では注意が必要です。眼の症状が強い時は、眼科の治療が必要になることがあります。

学校保健安全法では、第二種の学校感染症に規定されており、主な症状が消えてから2日を過ぎるまでは、登校・登園停止です。

⑨おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

概要

片側あるいは両側の耳下腺の腫れを特徴とする急性ウイルス感染症。ムンプスウイルスによって起こり、通常は1週間~10日で回復する、予後良好な病気。

毎年200万人以上がかかり、年齢は4歳が最も多く、3~6歳が約60%を占める。患者からの飛沫や接触を介して感染する。おたふくかぜワクチンを接種すると、90%以上の人が発症を免れる。

症状

2~3週間の潜伏期ののち、片側あるいは両側の耳下腺を中心に、顎下腺、舌下腺の腫脹が起こる。圧痛や嚥下痛、発熱を伴う。感染しても症状が現れない場合が30~35%ある。

合併症としては、症状が明らかな患者の約10%が無菌性髄膜炎を併発し、思春期以降の男性では約20~30%に精巣炎、女性では約7%が卵巣炎を起こすといわれる。また、約1000人に1人が難聴を起こすといわれるれ、その他に、膵炎や脳炎を合併することもある。

治療法

基本的に対症療法。合併症を併発した場合は入院治療が多くなります。
集団生活に入る前にワクチンで予防することが有効です。
学校保健安全法では第二種の感染症に属しており、耳下腺のはれが消えるまで登校・登園停止となります。

⑩EBウイルス感染症(伝染性単核球症)

概要

エプスタイン・バー(EB)ウイルスによる感染症。EBウイルス感染者とキスなどの親密な接触を行うことで、血液中に大量の白血球(単核球)がみられる伝染性単核球症に感染する。風邪など軽症のウイルス感染症に似た症状を起こすが、若年成人では重い症状が生じることもある。

症状

潜伏期間は通常30~50日。5歳未満の小児では、感染しても症状が現れないことが多く、成人では症状が出る場合も出ない場合もある。

全身のだるさ(けん怠感)と疲労感で始まり、これが数日から1週間続く。このような漠然とした症状に続き、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れが生じる。のどの痛みはしばしばひどくなり、のどの奥に膿のようなものができたり、肝機能異常や皮膚の発疹が出ることがある。
他の多くのウイルス感染症と症状が似ているため、診断の確定には、原因となるEBウイルスやサイトメガロウイルスの抗体検査が行われる。

治療法

特定の治療法はありません。発熱と痛みの緩和には、アセトアミノフェンを投与します。気道がひどく腫れるなどの一部の合併症は、コルチコステロイド薬(プレドニン)の内服で治療します。

⑪マイコプラズマ感染症・肺炎

概要

肺炎の10~20%程度がマイコプラズマが原因といわれている。
5~14歳の年齢に多いが、成人にも乳幼児にもマイコプラズマは感染する。家族の誰かがマイコプラズマに感染すると家族中にうつってしまう。マイコプラズマは通常の細菌とウイルスの中間の大きさと性質を持つ。ペニシリン系やセフェム系などの抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が有効である。

症状

発熱で発症し、1~2日遅れて咳が出て、だんだん痰がからんでくる。頭痛、全身倦怠感、咽頭痛を伴うことも多く、初期には上気道炎(いわゆる”かぜ”)と診断されることも多い。
マイコプラズマ感染を確認するためにはイムノカード「マイコプラズマ抗体」という血液の迅速検査を行う。発熱後5~7日でマイコプラズマ感染症かどうかがわかるが、症状が出始めてからの期間が短いと検査で陰性が出てしまうこともある。

治療法

マクロライド系の抗生物質を出します。

まずクラリスロマイシンを投与して症状が改善しなかったら、ジスロマックに変更するか血液検査を行います。マクロライド系の抗生物質は味がよくないのが欠点です。もとが苦い薬を甘いコーティングで何とか飲ませやすくしているのですが、そのコーティングがとれると薬の苦みが出てきてしまうのです。
このため手早く飲み込むのが薬を内服するコツです。飲み込んだ後も、何度も水を口に含み洗い流すように飲んでください。アイスクリームなどに混ぜるのも有効な方法です。濃厚な味のアイスクリームの方がよく、コンデンスミルクやケーキシロップに混ぜる方法も良いでしょう。
マクロライド系で効果がないときは成人ではテトラサイクリン系のミママイシンを投与しますが、小児ではテトラサイクリンは歯牙の着色などの副作用があるために基本的には使用禁止です。
どうしても必要なときには小学生以上に限って短期間使用することもあります。

⑫RSウィルス感染症

概要

RSウイルスによる乳幼児の代表的な呼吸器感染症。冬季に流行し、乳児の半数以上が1歳までに、ほぼ100%が2歳までに感染し、その後も再感染を繰り返す。

症状

感染後4〜5日の潜伏期ののち、鼻汁、咳、発熱などの上気道症状が現れる。3割程度の人は炎症が下気道まで波及し、気管支炎や細気管支炎を発症し、咳の増強、呼気性の喘鳴(ぜいぜいする)、多呼吸などが現れる。
通常は数日〜1週間で軽快するが、患者の1〜3%が重症化し入院治療となる。心肺に基礎疾患がある小児は重症化しやすい。新生児も注意が必要。
冬季に乳児が鼻汁、咳、ぜいぜいしたら、30〜40%がRSウイルス感染症と考えられる。鼻汁材料を用いたRSウイルスの抗原検出キットで検査できる。

治療法

対症療法が主体になります。発熱に対しては冷却しアセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を、喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては鎮咳去痰薬や気管支拡張薬などを用います。脱水気味になると喀痰が粘って吐き出すのが困難になるので、水分を補給しましょう。細菌感染の合併が疑われる場合は抗生剤を使用します。

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